ジョン・ウィリアムズ John Williams' New Disc
新作コーナー           by Yasu Kamio


ハリー・ポッターと賢者の石 ワーナーミュージック AMCY-7302 発売中
おおかたの予想通り、『フック』+『ホームアローン』だ。メロディ・ラインはあの予告編の曲をそのまま使っている。とくに興味深いのは。普段は隠し味的に出てくるチェレスタを全面に聴かせている点だ。CDのクレジットにもチェレスタ奏者の名前が掲載されるなど、チェレスタ本格的な導入となった。これは魔法学校という神秘的な背景を表すために多様したのではないかと感じる。同時にクリスマスの雰囲気をふんだんに出させるという効果もあるだろう。「メイン・タイトル」は、このチェレスタのソロで始まるのだ。  
アクション・スコアにいたっては『フック』だ。ストリングスのブラスのバランスが良いため、うるさくもなく、おとなしすぎることもなく、非常に心地よく聴ける。また、泣きの部分では、『パトリオット』と『エピソード1』も入っているので、ファンとしてはたまらないだろう。
途中、混声合唱団によるクリスマスの曲もあるが、これが悪魔的にダークにアレンジされていて面白い。(これをクリスマス・ポップスでやったら凄いだろうなあ) 全体的に『エピソード1』並のクラシカルな曲が並ぶので、オーケストラの好きな人にはたまらない1枚となることだろう。 なお、予告編用に使われたのは19曲目の「ヘドウィグのテーマ」である。

『A.I.』 ワーナーミュージック WPCR-10989  発売中
今回のウィリアムズの音楽は、今までスピルバーグ作品に提供してきたスコアの中でも実に独創的なサウンドが展開している。彼の音楽は普段からあまりシンセサイザーを全面に押し出すことがないが、この『A.I.』ではかなりシンセを手前に出して活用している感じが伺えるのだ。これはデビッド自身や、彼を取り巻く環境、未来世界での話ということも意識したのではないかと思える。
とはいうものの、全体的に今回の音楽の神髄は、リリカルな愛のテーマを持ったサウンドということが伝わってくる。
特に素晴らしいのはピアノを中心に奏でられる「モニカのテーマ」(12曲目)である。これは母子間の愛情をことのほか見事に表現しており、この1曲でこの映画の音楽のスタイルを代表しているといっていいほどのインパクトを持った作品だ。
映画のエンド・クレジットの部分では、ソプラノを絡ませた別ヴァージョンの「モニカのテーマ」(9曲目)が歌われるが、それは『プライベート・ライアン』の終わりで、「戦没者たちへの賛歌」が淡々と流れていくというような、感動的な雰囲気を味合わせてくれているのだ。

 『パトリオット』
   The Patriot      エイベックス  AVEX AVCW-13023  発売中
『ID4』『ゴジラ』でエメリッヒ監督作品ではお馴染みのデビッド・アーノルドがすでに作曲の準備を行っていたが、デモ音楽の出来がよくないということで、彼は早々に解雇されてしまった。そこで、急きょ登板したのは巨匠J・ウィリアムズ、プロデューサーのマーク・ゴードンが、『プライベート・ライアン』で一緒に仕事をしていたこともあって、運よく空いていたウィリアムズと話がすぐまとまった。エメリッヒにとっては棚からぼたもち状態、これほどの助っ人は他にいない。
ウィリアムズの音楽は、さすが巨匠の音作りだと感心させられるほど充実した音楽を提供、スケールが大きく、しかもメロディアスで、それはレトロがかった映像に見事にマッチしたスコアを響かせていた。それは同じ戦争ものでも、音楽を極力押さえた『プライベート・ライアン』とは形態が違っていた。『パトリオット』は本来の戦争映画特有の音楽全面に押し出したドラマチックな作りで展開している。
 全体として戦闘シーンが多いことから、ブラスを主力とした豪快なバトル・スコアが響き渡る。特にテーマ曲のインパクトは強い。二つのパートからなるこのテーマ曲は、前半に人気ソリスト、マーク・オコナーのヴァイオリンをフィーチャーして美しいアイリッシュ音楽を聴かせ、後半部分ではバトルシーンを演出する曲として、ピッコロのアンサンブルによる軍楽隊のマーチ調の曲がフーガ風に展開し、これらのメロディは一度聴いたら忘れらないほどの深い魅力を振りまいている。また、カブリエルとアンの恋愛をハープとチェンバロが彩るラブ・テーマは、ことのほかロマンチックだ。全体を通して、時代ものの大作として文句のつけようのない優秀なスコアを聴かせている。

『アンジェラの灰』
 Angela's Ashes           ユニバーサル・ミュージック POCF-1026 発売中
 『アンジェラの灰』は、アイルランド出身の小説家、フランク・マッコートの自伝的小説で、彼の貧乏に喘いだ子供時代を描いている作品だ。
エミリー・ワトソンが母親役、父親役には『フル・モンティ』のロバート・カーライルが扮する。そんな訳でウィリアムズ氏の音楽もアイルランドといった背景から『遥かなる大地へ』のようなアイリッシュ音楽が頻繁に聴かれるのでは? と思っていたら、これは間違いだった。
 全編にわたり、『シンドラーのリスト』の様なストリングスと木管を中心としたサウンドが響き渡る。テーマ曲は6分もあり、二つのセクションから成り立つ。前半のテーマは、ピアノに旋律を弾かせたメロディ重視の曲で、ちょうど『推定無罪』のテーマ曲を彷佛させる。バックのピアノ伴奏がまさに『推定無罪』だ。また、後半のテーマはメロディがあまりはっきしないスコアで、ストリングスに歌わせた、それは『シンドラーのリスト』の「もっと救えたのに」を彷佛とさせる。中のアンダースコアにいたっては、木管が中心で、特にオーボエが氏の「バスーン協奏曲」で聴かせたようなかん高いスコアを聴かせるのだ。
これらのスコアの狙いは、ウィリアムズ自身の言葉によれば、主人公の奥底に潜む感情を表現したかったそうだ。


過去のサントラ・レヴュー1
過去のサントラ・レヴュー2
過去のサントラ・レヴュー3

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